2021年 3月 5日
英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)は、2021年1月1日以降にグレートブリテン(および北アイルランドと欧州連合(EU))市場で市販される医療機器に関する新しいガイダンスを発行しました。合意なしのブレグジット(英国のEU離脱)を見越したものです。
MHRAは、今後も変わらず、英国で市販される医療機器を監督する中央機関となります。もちろん、新たな法令が制定されることになります。新立法には、英国議会の承認を必要とすべきであることが、このガイダンスで明確に記されています。
合意なしEU離脱後、英国は第三国となります。ですので、英国を拠点とする製造業者はEUの27加盟国内に、代理人と輸入業者の両方を置く必要があります。このプロセスは明確で市場でもよく理解されていますが、代理人の指名には時間がかかるということは英国を拠点とする製造業者にあまり理解されていません。代理人指名にすぐにとりかかるべきです。
また、この変更により、英国拠点のノーティファイドボディはCEマーキング認証を発行できないことになります。最初に設定されたブレグジット期限(2019年3月29日)より前からこのことはよく知られていましたので、ほとんどの製造業者は、CEマーキング認証に使用するノーティファイドボディをEUの27加盟国内の認定機関に変更する計画を実施しています。
まず確認しておきたいのは、英国でEUのCEマーキングは2023年6月30日まで有効だということです。同様に、現行の一連の医療機器指令(MDD、IVDD、AIMDD)のもとでEEA(欧州経済領域)内のノーティファイドボディから発行されたCEマーキング認証も、2023年6月30日まで有効です。この期間、欧州医療機器規則(MDR)や欧州体外診断用医療機器規則(IVDR)への適合性証明でも市販が許可されるでしょう。
合意なきブレグジットの場合、当然、MHRAはEUとの間で医療機器に関するデータの交換ができなくなります。そのため、UKCA(英国適合性評価済)マークが導入されることが決定しました。 2023年6月30日までに、英国で市販されるCEマーキング機器は新しい法令に準拠し、UKCAマークを取得していなければなりません。ラベリングも変更が必要です。
英国規制システムでは、クラスI自己宣言機器や一般の体外診断用医療機器には自己宣言が採用される見通しです。高リスク医療機器・体外診断用医療機器は英国審査機関による承認を得て、UKCA認証を受領し、UKCAマークを表示しなくてはなりません。現在英国でMDD、IVDD、AIMDDAの認定機関となっているノーティファイドボディは、「自動的にUKCA認定機関となる」ことができるようになるとガイダンスには記載されています。EUのノーティファイドボディはUKCA認証を発行することはできません。
製造業者は、2023年6月30日以前に、自主的に英国の法令への遵守対応をすることが可能です。これまで欧州の指令や規則の遵守をしていない機器は、当然ながら、2021年1月1日以降は新法令への遵守が求められます。
2021年1月1日以降、英国で市販される機器のMHRA登録には新たな要求事項が適用されます。 その新しい要求事項はリスクレベルによって段階的に適用されます。
猶予期間は以下のとおりです。
この猶予期間は、機器製造業者または代理人が英国内に既に存在していてMHRAへの届出対象となっている機器には適用されませんのでご注意ください。
北アイルランドにはEU規則が継続して適用されるため、特別な措置がとられますが、EU市場の一部ではなくなります。基本的に、EUの事業者やEU内の代理人を指定している事業者が北アイルランド市場で製品を市販するにはCEマーキングが必要です。CEマーキング認定は、EUのノーティファイドボディから取得しなければなりません。UKCA認証は適用されません。英国が認定した機関で機器が承認されると、UK(NI)マークを表示できます。これはCEマークに代わるものではありません。CEマークとUK(NI)マークの両方を表示している機器は、EU市場では販売できません。UKCAマークだけを表示した機器は、北アイルランド市場での販売はできませんが、CEマークまたはUK(NI)マークのどちらかがあれば、北アイルランド市場で販売できます。
エコノミックオペレーターと機器の登録は、エコノミックオペレーターの拠点によって異なります。
新規則の要求事項により、英国に拠点を持たない機器製造業者は英国責任者(UK REP)を指名しなければなりません。 この指名の猶予期間は、MHRAへの登録に関する猶予期間と連動します。英国責任者の責任のひとつが、英国外の製造業者の登録であるためです。また、ガイダンスで挙げられている英国責任者の責任のいくつかは、MDRやIVDRで定められている代理人の役割と一致しています。たとえば以下の役割が挙げられます。
この英国責任者の役割は2019年に提示された英国法案によるものですが、この法案は、英国市場に医療機器を上市する英国責任者の責任にも言及しています。これは、当然のことながら輸入業者の業務であり、実際にこの法案では輸入業者の役割をそのように定めています。そうすると、輸入業者と英国責任者は同一であることになります。 輸入業者と英国責任者が同一である場合、エコノミックオペレーターの役割が望ましくないかたちで入り混じってしまいます。Emergo by ULからの問い合わせに対し、MHRAからは、この問題はまだ協議中であるとの連絡を受けています。 この点が明確になるまでは、指名の決定を保留することを業界関係者にお勧めします。
英国のラベリングに関する要求事項はそれほど厳密ではありません。基本的に、医療機器は規則への遵守に基づいてラベリングされます。2021年1月1日から、機器にはEU CEマークかUKCAマークのどちらかが必要です。2023年7月1日以降は、すべての機器にUKCAマークが必須となります。EU規則と新UK法令の両方を順守している機器は、2023年7月1日以降、CEマークとUKCAマークの両方を付けて市販が可能です。
ラベルに輸入業者や英国責任者の名前や住所の記載が必要かどうかはまだ不明です。このガイダンス文書ではそこまでの詳細は記載されていません。法案ではEUの指令や規則の付属書Iの参照にとどまっていますが、これらのラベリング要件はEU市場を対象としたものです。UKCAの要求事項として、使用者向け情報に英国の住所を記載することが求められると考えられます。
繰り返しになりますが、上記は合意なきブレグジットを前提としたものです。Emergo by ULは今後も展開に注視し、詳細が分かり次第お知らせします。特に、Emergo by ULでどのような英国責任者サービスを提供できるかを検討していきます。ブレグジット後の規制がどのようなものになるか、どう対応すべきかについては、業界関係者および当事者は、MHRAからの今後の詳細を待つのが得策だと考えます。
Emergo by UL、Regulatory Affairs部門でGlobal Regulatory Manager を務めるEvangeline Loh PhD、RAC(薬事専門家)と、同部門のSenior ConsultantであるRonald Boumansが執筆しました。